名言・格言・言葉の宝石箱

昨日を越え、明日を掴み、今日を生きるあなたへ

曽野綾子名言集(引退しない人生)

PR

2015-04-27_150123


段取りの力

段取りをし続けることが、
実は老年において人間と
しての基本的な機能を失わ
せない強力な方法なのだ、
と最近思うようになった。
ボケたり気力が失われたり
すると、人はもう段取りを
つけることができなくなる。
そうなったら、思いつき
で思いつきの行動に出る
他はなくなる。段取りは、
意志の力、予測能力、
外界との調和の認識、
そして何より謙虚さ、
など総合的な判断が要る
上に、
たえずそのような配慮を
することで心を錆びつかせ
ないことができる。

引用元:「晩年の美学を求めて」


 

感謝だけである

家族から捨てられること
はあっても、社会から
見放されることはない。
どんなに無力でも、社会は
必ず屋根の下に収容し、
食べさせ、体を拭き、排泄
を助ける。そんなことの
できる国が世界中にそう
あるわけではない。
私たちはただ幸運だけで
こうした国に生まれた。
日本に生まれるために、
努力したのでもなく、
金を払ったのでもない。
正直で頭がよくて、努力家
で働き者の多い日本人の
いる日本という国に生まれた
から得をしていることは
たくさんある。

国中が貧しくて、政治家も
官吏もすべて公然と汚職を
している国も世界中に珍しく
はない。日本はそうでは
ない。収賄の判決を受けれ
ば総理大臣でも収監できる
国だ。こんな国はめったに
ないし、そういう国に生ま
れることができたのも幸運
である。
だから晩年も感謝して明るく
生きることである。いや、
もっとはっきりいえば、
心の中は不満だらけでも
表向きだけは明るく振る舞う
義務が晩年にはある。
心から相手を好きではなく
ても、愛しているのと同じ
理性的な行動を取ること
だけが、むしろほんとうの
愛なのだ、と聖書が規定して
いるのと同じである。
長く生きた人々は、或いは
病気で苦労した人々は、
それくらいの嘘がつけなくて
はならない。

引用元:「晩年の美学を求めて」

 

「公害」に気をつけて

服装に関心がないのは
この頃間違いだと思うように
なった。若い人はまあいい
としても、お見苦しい年寄り
が、身なりに気を使わない
なんて「公害」である。
そして都会というところは
本当はだらしなくていたい
絶対多数の怠け者にも、
否応なしに少しばかりの
緊張を強いるところなの
である。

引用元:「都会の幸福」


 

勘違いの落とし穴

高齢者の陥りやすい
落とし穴を考えてみても
いい。
人は誰でも多かれ少なかれ
年を取ると偉そうにしている
ことを許されるのだ。
別にいいことをしていなく
ても、日本的美風が残って
いればの話だが、年齢が
一番上になるほど、上座に
据えられる。お茶も最初に
供される。「お寒くない
ですか」と気にされ、
階段を上り下りする時には
荷物も持ってもらえる。
こういう習慣は日本的美風
としても続けて欲しいもの
である。しかし高齢者が
それによって自分は偉いの
だと勘違いしたら愚かだと
言わねばならない。

引用元:「晩年の美学を求めて」

生きるものの基本姿勢

どのような人も晩年まで
生活と闘わねばならない
のである。
体が動く間は、自分で「餌」
を探しに行くのが当然だ。
それが動物の基本姿勢で
ある。
しかし最近では自分が働かな
くてもいいように、社会的
施設や設備をお金で買える
ようになった。それは捕まら
ないのにライオンが自ら志願
して動物園の檻に入るような
ものだ、と私は感じるように
なっている。
安全に飽食し、弱肉強食の
原則にも組み入れられず、
敵に襲撃される危険性も
全くない動物園の動物の一生
はやはり幸福とは思えない。

本当に病気になって動けなく
なった野生動物は、保護され
る手段があったほうがいい。
しかしそれまでは、毛皮が
すり切れて禿のようになり
眼もつろに、足もよろよろ
になるまで、動物は自ら生き
ようとするのが普通なので
ある。
その基本原則を肝に銘じた
上で、人間も死までの計画を
立てた方がいいと、私は
自分に言い聞かせている。

引用元:「晩年の美学を求めて」

>>>別の「曽野綾子名言集」を読む

Return Top